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地上と地下の移動だけで味わう渡航体験!?

 

2万5000km――なんの数字のことか分かりますか?中国ですでに敷設された高速鉄道の総営業距離数(2018年2月現在)なんです。さらに2020年には3万キロメートルに達するというのですが、日本の新幹線の営業距離(約3,500キロ)の9倍もの距離に及ぼうというのだから、中国の高速鉄道の歴史がわずか10数年ほどしかないというのが嘘のようです。

 

 

そんなスケールからすると、18年下半期に開通した香港―深セン間の高速鉄道(「廣深港高鉄」)は距離からいえば取るに足らない存在に感じるかも知れません。でも、じつは「小さな一歩だが偉大な一歩」なんです。

 

 

香港から深センに移動するにはこれまでメトロで移動するのが一番便利でした。香港メトロのホンハム駅から羅湖駅、もしくは落馬洲駅に向かう方法です。それぞれの駅には構内に出入境手続の施設が設置され、羅湖駅の場合は深セン駅へ、落馬洲駅の場合は福田口岸駅へと、それぞれ深セン側に徒歩で移動ができるのです。一方、ホンハム駅から広州に向かう場合は「広九直通車(広州-九龍)」がありました。香港側の乗車駅では出境手続きを、大陸側の到着駅では入境手続きを行う形式がとられてきたのです。

*ちなみにホンハム駅から羅湖駅までの片道普通車料金は36.5HKドル、広州東駅までの直行列車は210HKドルとなっています。

 

 

さて、本題の「香港新幹線」に話題を戻しましょう。「廣深港高鉄」の最高速度は時速300kmと報じられています。深セン行きの列車には、深セン中心部の「福田」行きと、同市北部にあるターミナル駅の「深セン北」行きの2つがあります。始発駅となる香港の西九龍駅から40km離れた深セン北駅まで最速19分で結んでいます。従来の移動時間の3分の1以下ですね。気になる料金はというと、福田駅までが68人民元深セン北駅までは75人民元、広州南駅までは215人民元に設定されています。広州南駅までですと東京から小田原に移動するような時間感覚ですね。

 

ただ、深セン市中心部へのアクセスとなると深セン駅を拠点にしたほうが便利そうです。さらに広州については広州南駅があまりにも巨大なため、構内を徒歩で移動するのが大変だという指摘もあります。都市間の移動時間は短縮したものの、駅構内で歩く時間が増えるというのはジレンマといえそうです。

 

 

 

西九龍駅は香港の中心部である九龍地区の海沿いにある地下駅です。メトロでいうと、九龍駅と柯士甸(オースティン)駅の中間です。空港と市内を結ぶ空港鉄道であるエアポートエクスプレスの「九龍」駅から連絡通路で直結していますから、利便性は高そうです。

 

 

西九龍駅の出札は地下1階にあります。パスポートを提示して乗車券を購入したら、改札を抜けて安全検査を受けます。そして地下3階へ――。その後、香港の検疫を通り、黄色い出境ラインを越えると控えているのが中国本土側のイミグレーションです。これを「一地両検」と呼ぶんだそうです。一つの駅で中国本土との出入境が完了してしまうのは圧巻ですね。

 

地下にある駅の待合室やホームは中国本土。でも、人と車が忙しく行き交う地上は香港。なんだか不思議な感じがしませんか。

 

高速鉄道のチケットを予約するにはTrip.com(旧Ctrip)が便利です。高速鉄道のチケットの申込みは、オフィシャルサイト(https://www.highspeed.mtr.com.hk/tc/ticket/fare.html)からできますが、航空券予約やホテル予約でおなじみのTrip.com(旧Ctrip)を活用してもよいでしょう。会員登録を済ませたら、「列車を検索」画面から乗車駅と降車駅、そして乗車日を入力してください。フライト検索と同じ要領で予約が可能な列車の一覧が表示されます。条件に最も合う列車を選び、画面の指示に従って必要な内容を入力、予約申込を行うことができます。乗車予約は希望する乗車日の60日前から発車35分前までが可能です。

 

 

上記の手続きで手配できるのは乗車券との「引換券」です。乗車券を受け取るには、予約に利用した身分証明書と受理番号(Eから始まる数字の番号)を用意し、鉄道駅または正規の販売代理所まで足を運びます。駅に着いたら、予約した乗車券の受け取りなら「取票」(チューピャオ)を、乗車券の購入なら「售票」(ショウピャオ)の表示のある窓口を探してください。自動発券機が設置されている駅もありますが、中国IDカード(中華人民共和国居民身分証)での受け取りにしか対応していません。

 

支払い済で発券がまだの切符のキャンセルについては、少なくとも発車時刻の2時間前までに、Trip.comアカウントから手続きが可能です。紙の乗車券が発券済みの場合、紙の乗車券と予約に利用した身分証明書の原本を用意し、鉄道駅の変更窓口(改签窗口)で手続をすることになります。初回の変更に限り、手数料はかかりません。一方、紙の乗車券が未発券の場合はTrip.comでは変更できません。予約をキャンセルし、新規予約が必要になります。

 

・乗車の15日前まで(15日目除外)無料

・乗車の15日前—発車の49時間前 乗車券1枚につき 運賃の5%(最低2元)

・発車の49時間前—25時間前まで 乗車券1枚につき運賃の10%。

・発車まで25時間を切っている場合 乗車券1枚につき運賃の20%。

 

高速鉄道の話しではありませんが、昨今、香港を含めた珠江デルタの一体化が進んでいます。

その象徴的なニュースとして、もうひとつ「港珠澳大橋」があります。ざっと9年越しの大工事の末に完成した世界最長の海上橋です。

 

 

開通したのは10月24日。そのインパクトはとてつもなく大きく、香港、マカオ、中国本土をつなぐ「粤港澳大湾区」(グレーターベイエリア)構想が、もはや夢物語ではなく現実の域に入ってきたといえそうです。ちなみに橋梁の全長距離は、一部の海底トンネルを含めると約55kmに及ぶとか。今回の開通によって、それまでフェリーで片道約1時間かかっていた香港からマカオへの移動は約30分に短縮しています。さらに珠海までのアクセスとなると、従来の4時間から45分へと大幅な時短です。

 

とはいうものの、ここで一つ落とし穴がありました。香港からマカオへ向かうバスの乗車料金は65HKドル(約900円)となっており、フェリー料金の170HKドル(約2400円)より確かに安いのですが、香港側のバス乗り場となる空港まで移動するのに時間やコストにロスがあるんだそうです。

 

 

ですから、香港から他都市にお得に移動したい場合は、くれぐれも高速鉄道一辺倒にならないでくださいね。お値打ち価格のフライトチケットのチェックもどうか怠りなく。