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TO EAT| 珍名!奇想天外の中国グルメ

 

中華料理はやっぱり奥深い――バラエティーに富んだ料理名に触れたとき、多くの人がそんな感慨に浸るのではないでしょうか。漢字の字面をひと目見ただけでは果たしてどんな料理なのか想像がつかないケースも少なくありません。では、奇想天外、ギークリーな料理名の世界をのぞいてみることにいたしましょう。

“キタなーい”(!?)

スイーツや嗜好品が大流行

 

「脏脏包(Zang1Zang1Bao1)」に「脏脏茶(Zang1Zang1Cha2)」。どちらも中国でいま若者を中心に流行っているアイテムです。“脏”は直訳すると「きたない」という意味です。となると「脏脏包」は“きたないパン”、「脏脏茶」は“きたないティー”ということになります。それらの正体が何かというと、ココアパウダーを振りかけたチョコクロワッサンやロールケーキ、それに黒糖タピオカミルクティです。食べるときに手や口のまわりがパウダーで汚れてしまうことや、容器の底に沈殿する黒糖の見栄えの悪さ(?)を“脏”という言葉で表現したのでしょう。ちなみに、インドネシアに生息するジャコウネコのフンから取り出したコーヒー豆(ジャコウネココーヒー)は、中国語で表記すると「猫屎(mao1shi3)咖啡」(ネコのフンのコーヒー)になります。こちらもちょっと衝撃的です。

 

 

さらには伝統的な中華料理の世界もまた驚きの連続です。摩訶不思議なネーミングの料理をいくつかピックアップしてみましょう。

尾籠(びろう)な呼称などへっちゃら】

 

 

「おしっこを撒き散らしたビーフボール」つて何!? びっくり仰天の名称ですが、これは「牛肉とシャコの団子入りスープ」のことです。肉だんごをかむと、そのなかから液状になったシャコエビがほとばしり出てきます。その様子や食感を「撒尿」という漢字で表現しているのでしょう。食べ物の名称として果たして妥当なのだろうかという違和感はありますが、身近にある中華グルメの代表格としてなじみのある方も多いことでしょう。

【字面からして迫力満点】

 

 

昇竜と猛虎といったらプロ野球の試合カードを想像してしまいますが、有名な広東料理のひとつです。材料として使われているのが蛇肉と猫肉。これらを煮込んだ料理と聞いたらを眉をひそめる人もいるかも知れませんね。俗に“広東人除了地上四条腿的卓子、天上飛的飛機之外,其他什麼東西都敢吃(広東人は4本足のものは机と椅子以外、飛ぶものは飛行機以外なんでも食べる)”と言われます。ですから料理名からは思いも寄らない食材があふれているというわけです。ちなみに「龍鳳大菜」と言ったら、蛇と鶏肉の料理です。ニワトリがフェニックスと言うのは大昇進ですね。

【動物かと思ったら人名だった】

 

 

“不理”とは意に介さないこと、つまり相手にしないということです。犬(狗)も相手にしない中華まんと言ったら、さぞいただけないお味かと思いきや、天津名物の代表的グルメとなっているのは、周知のとおりです。「狗」というのは、高い評判の中華まんを作っていた料理人の幼名です。「狗子」と呼ばれていたのだそうです。その料理人は料理の腕が立つ一方で、お客の扱いがあまり行き届かず、「狗仔は包子を売る時に誰も相手にしない」のが常だったようで、これが「狗不理包子」の名前の由来なのだそうです。なお、天津には「猫不聞餃子」(猫も臭いを嗅がない水餃子)というお店もあります。さしずめ「猫またぎ」ということになりますが、実際はグルメスポットとして評判も上々だそうです。

【“絶世の美女”の名に秘められたもの】

 

 

アリソ貝のスープを「清湯西施舌」というのだそうです。西施といえば、「臥薪嘗胆」の故事に出てくる越王・勾践が策謀のために呉王・夫差に献上した美女です。彼女を寵愛した夫差は政治を顧みなくなり、国力を弱体化させたことで越によって攻め滅ぼされ、西施も越に帰国します。ところが、西施が再び「傾城の美女」となることを恐れた越王夫人は彼女を生きたまま長江に沈め殺害すると、その場所からは貝がよく獲れるようになったのだそうです。そういえば日本には『私は貝になりたい』という映画やドラマがありました。冤罪の悲劇と無実の訴え――貝にはそんな隠喩が込められているのでしょうか。

【じつはダジャレだったのか】

 

 

四川省成都に住む夫婦が牛の内臓を煮込んで作った香辛料の効いた料理を指します。別に“肺”の“片”(薄切りにしたもの)が調理されているわけではありません。“肺”(Fei4)は「不要なもの」を意味する“廃”の発音に通じます。内臓は本来なら捨てられるべきもの(“ほうるもん”)です。それを料理にしたことが「ホルモン」という名前の由来だと言われるように、“肺片”も“廃片”から来ているという説があります。

【ゴージャス極まる料理名の実体は】

 

 

珍珠(真珠)はおこげの砕けたもの、米翡翠はホウレンソウ、白玉は豆腐を表しています。料理名の由来は明の太祖・朱元璋に関わるエピソードです。貧しい生活を送っていた少年時代、三日三晩飲まず食わずとなって道端で倒れていた彼を救ったのがある老婆で、彼女が作ってあげたのがこのスープ。そして、老婆はからかい半分に「真珠と翡翠と白玉スープ」という料理名を朱元璋に告げたのだそうです。この名称をめぐる逸話は時代を下り漫才のネタにもなっているとか。なんとも、いわくつきの料理と言えそうです。