北京大興国際空港はこんなにすごい 「世界7大奇跡」と言われる理由
旅行オフシーズンに当たる時期にありながら、にわかに注目を浴びているスポットがあります。中国建国70周年の直前、9月25日に開港した北京大興国際空港です。ネットでは昨今、とみに新空港に関連する報道が増えてきました。英国「ガーディアン」誌から「世界7大奇跡」と称された、“世界最大空港”の外貌を見ていきましょう。
アジアの交通ハブを目指す
北京大興国際空港では、北京の大興区と河北省の廊坊市の間に位置する“超弩級”大型国際航空総合交通ターミナルです。建設の背景には、2022年に開催が予定される北京冬季オリンピックに向けた輸送力の強化はもとより、華北エリア、ひいては中国全土の経済成長を牽引する新たな交通ハブの構築が必要とされていた事情があります。
かねてから話題性は抜群だった同空港ですが、なんといってもスケールが桁違いです。
総事業費は4,500億元(630億ドル)。滑走路は4本あり、停泊できる飛行機は268機(近接したエリアでは79機)。地上5階、地下2階からなるターミナルは面積が70万㎡あり、すでに国内、国際あわせて119の航路が就航しているといわれます。(※日本との航路としては中国東方航空が福岡便を運航しています。)
圧巻なのはターミナルのフォルムでしょうか。ザハ・ハディド建築の集大成といわれる、そのデザインは、「鳳凰が羽を広げた」イメージを表現したものだそうですが、ずば抜けて個性的で奇抜な形状となっています。
世界最大・世界初のオンパレード
英国「ガーディアン」紙をして「世界7大奇跡」といわしめた同空港の“実力”、それは数々の「世界ナンバーワン」「史上初」「オンリーワン」といった評価から容易に察することができるでしょう。
「史上初」という視点で見れば、出発、到着ロビーがそれぞれ2層からなる世界唯一の空港である点は特筆に値するでしょう。
高速鉄道が乗り入れていることも看過できません。たしかに上海のリニア・モーターカーも浦東国際空港に接続していますが、あいにく駅は2つのターミナルの中央に位置しています。それに、上海浦東エリアの中心部に至る手前の龍陽路駅が終点となっており、移動には他の交通手段との連携が必要になるのが実状です。
その点、北京大興国際空港は、市内とのアクセスの良さはもとより、多人数を収容できるエレベーターやエスカレーターが多数設置され、シームレスな移動が可能な点でも大きなアドバンテージがありそうです。
ハイテク三昧のスマート空港
北京大興空港が世界から注目を浴びる背景として看過できないのは、“スマート空港”というコンセプトです。導入されたハイテク技術の国産化率は98%に達しており、「特許技術」は103個にのぼると言われています。
10台のロボットが設置され、搭乗客の質問に応答するサービスが提供されていれば、チケットカウンターのスタッフの頭上にQRコードが掲げられ、航空会社の会員ならこれをスキャンするだけで電子チケットが発券される仕組みになっています。一方、セルフ荷物預け機では、荷物にRFIDタグが貼られ、スマホで荷物がどこにあるか確認することができます。
「無感通関検査」もハイライトのひとつです。顔認証を行い、身分証の写真と顔の照合にかかる時間は約2秒。長い列に並ぶ必要はありません。
そのほか、駐車場では「スマートロボット停車システム」が運用され、自動車を指定場所に置くだけでロボットが車両を空車位置に移動してくれます。
また、ファーウェイが航空会社各社、移動通信キャリア各社ともに約3,000台におよぶ5G用中継器を設置し、先進的な通信インフラを構築しています。
地下鉄の最高時速が160キロ
ちなみに北京大興空港へのアクセスは、すでに開通している地下鉄新空港線や京雄高速鉄道(北京西駅~大興国際空港)が便利です。
北京西駅から空港まで高速鉄道の列車で28分。あるいは北京市街地南部の草橋駅まで地下鉄やハイヤーで移動し、ここから地下鉄新空港線で移動するという方法もあります。最高時速160キロで運行されているといいますから、もはや地下鉄というカテゴリーには収まらないかも知れませんね。
「ベスト空港番付」入りに照準か?
そのほか、構内には免震構造や太陽光発電システムが採用されていたり、中央美術学院がプロデュースした巨大アートが随所にちりばめられていたりします。
大規模な施設でありながら、ターミナル中心部から最も遠い搭乗口までの距離はせいぜい600メートル。異彩を放つ設計にはヒューマナイズされた配慮がたくさん施されていることがお分かりになるのではないでしょうか。
結局、北京大興国際空港のキーワードは“規模”よりも“品質”です。「Skytrax」が今年3月に公開した「世界で最も優れた空港ランキング(World’s Best Airports 2019)」では、日本の代表的な空港が上位にランク(第2位・羽田空港、第6位・中部国際空港、第9位・成田国際空港、第11位・関西国際空港)されたものの、中国本土の国際空港は存在感がありませんでした。かりに中国本土で初のランキング入りを果たす国際空港があるとしたら、まさにそれは北京大興空港だといえるのではないでしょうか。
2025年には旅客数が延べ7,200万人、2040年には1億人の需要を想定しているという北京大興空港。中国の首都の玄関、そしてランドマーク、アジアの最大ハブの座を射止めるうえで、さしあたっての照準である「首都空港」超えは決して遠い未来のことではないはずです。(文:耕雲)