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日中で盛り上がる「今年の漢字」 最終選考に残った有力候補は?

 

年末のカウントダウン開始を前に、「今年の漢字」にまつわる報道がたけなわです。「変」(女優・井桁弘恵)、「再」(笑福亭鶴瓶)、「黒」(俳優・佐藤健)、「恥」(ゴルファー・渋野日向子)といったように、有名人が自身の一年を漢字で総括し、それが報道になるといった連鎖も続いています。一方、中国ではIT企業がビックデータを元に「年度漢字」の有力候補をピックアップするなど、日本とはちょっと異なる趣で盛り上がりを見せているようです。

25年目を迎えた「今年の漢字

 

 

今年の漢字」は、その年の世相を表す漢字を選出するキャンペーンで、毎年、財団法人日本漢字能力検定協会が実施しています。現在、「漢字の日」に当たる12月12日の最終選考発表に向けて、公式サイト等のルートで公募(※1)が行われています。

1995年以来、最も応募数の多かった漢字一字が選ばれ、京都・清水寺森清範貫主がその度に揮毫してきましたが、今年は歴代の作品を陳列した特別展(※2)も催されているそうです。創設から25周年という区切りのよい年に加え、今年は改元にも当たったことから、例年に増して盛り上がりを見せている感があります。

 

※1  応募期間は12月5日まで。https://www.kanken.or.jp/kanji2019/

※2  2020年2月16日まで漢検漢字博物館・図書館(祇園・漢字ミュージアム)で開催。

一文字で世相を斬る大胆さ

 

 

このキャンペーンが痛快なのは、たった漢字一字で世相を斬るという大胆な試みであるからでしょう。昨年は地震や豪雨、台風等、大規模災害が派生したことを受け、応募総数19万3,214票のうち、2万858票を集めた「災」が1位に選出されました。

では、2019年はどんな文字が選ばれるのでしょうか。今年も台風、火災等が続き、「災」の“連続受賞”という線もありそうですが、いかがなものでしょうか。

世の中の不安を映し出す漢字を選ぶのはもう懲り懲りという人も少なくないことでしょう。むしろ「世直し」への願いと期待を込めた漢字が選ばれる可能性も大きそうです。改元を背景に「令」当たりが最有力候補という報道もありましたが、さもありなんです。

そのほか、ネット報道では、次点や大穴の候補として、台風から「風」や「水」、ラグビーワールドカップから「闘」、相次いだ火災事故から「火」といった漢字を予想するものもありました。

 

「年度漢字」に2つのバージョン

 

 

じつは、社会の変遷、世界の出来事を描写する漢字を選出しようとする「年度漢字」キャンペーンは、日本に限らず、中国本土、台湾エリア、マレーシア等でも毎年行われています。マレーシアを例にとると17日に投票が打ち切られており、現在、「憂(You)」「税(Shui)」「厭(Yam)」「霾(Mai)」「困(Kun)」「悔(Hui)」「馬(Ma)」「爪(Zhua)」「乱(Luan)」「騙(Pian)」等がノミネートされています。CNS等の報道によると、日本より一足早い12月8日に最終発表が行われる予定です。

 

 

中国本土では、中国国家言語資源モニタリング・研究センターや商務印書館、人民網、騰訊(テンセント)などが共同で主催しており、今年の実施で14年目を数えます。特徴的なのは“国内字”と“国際字”を一つずつ選んでいる点で、昨年の「年度漢字」には「奮」(国内)と「退」(国際)が選ばれました。

これらとは別に、専門家から「収録の意義なし」とダメ押しを喰らいながらも、ネットユーザーが投稿する自作文字も脚光を浴びており、近年、微博等のSNSで人気キーワードになってきました。昨年、話題になったのは“qiou”という、“窮”(Qiong/貧しい)と“丑”(Chou/醜い)を組み合わせた”漢字”です。形状といい、読み方といい、常軌を逸した奇抜な文字となっています。

2019年の最有力候補は⁉

 

 

中国本土で行われる「年度漢字」の選考には3つのステップがあり、現在は人民網や微信、微博等で募集が行われている段階です。そのあと、12月4日から8日にかけて専門家らが5文字に候補を絞り込み、9月から19日の間に実施されるネット投票を通して最終決定し、20日に発表するという段取りです。

5つのノミネート候補に残る漢字は何か、予想合戦がたけなわななかで、まず脚光を浴びたのは、国家言語資源監測と研究センターが言語データベースのモニタリングを通して推薦した“献、減、開”(国内字)と“火、墻、商”(国際字)です。一方、GSデータ(清博大数拠)は、“国、愛、治、紀、会”(国内)と“戦、火、脱、選、退”(国際)を候補として推薦しています。

「年度漢字」以外にも注目!

 

 

中国本土の「年度漢字―国内字―」には何かとポジティブな言葉が選ばれやすいのでしょうか。改元を行った日本と同じく、中国も今年は建国70周年という時代の節目に当たりました。そんな背景もあってか、「塑」という文字を強く推すある専門家の意見が中国国内の報道で取り上げられていました。「重塑」(※3)の「塑」には、初心を忘れず、変化によりよく適応していこうという意味が込められているのだそうです。

なお、現在、「年度漢字」だけでなく、「年度十大流行語」「年度十大ネット用語」「年度十大新用語」などの選考キャンペーンも行われています。2019年を総括する漢字や用語に、どんなものが選ばれるのか目が離せません。(文:耕雲)

 

※3 重塑chóng sù /再構築、再生、復興、再建(する)の意味