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中国人がうなる“和製”漢字 日本人でも読めると限らない!?

 

沢尻エリカ」は“澤尻英里華”、それとも“澤尻絵理香”?――いまや日本の芸能ネタ、ゴシップ記事に至るまで瞬く間に中国語訳され伝播する時代。とはいえ、人名や地名、企業名等、とかく固有名詞の表記に当たっては“迷走”も見られそうです。それに日本語には“和製漢字”という難関もあります。

 

和製英語”はやっぱり難しい!?

 

 

中国語を学んだことがない日本人と日本語を学んだことがない中国人がコミュニケーションをとれる――それには2つの理由が考えられます。

ひとつは、古代、日本が“漢字”を世界でオンリーワンの文字として取り入れ、それを元にひらがなやカタカナを発明しなら文化の礎を築いてきたことです。そして、もうひとつは中国語の社会・人文・科学分野の名詞・用語の約70%(※)が日本から輸入されてきたとことがあるでしょう。(※王彬彬氏『現代中国語の中の日本語「外来語」問題』から)。

 

 

むしろ、日本人が中国人とコミュニケーションをとるうえで障害になりやすいものがあるとしたら、中国語については簡体字、日本語については欧米(とくに米国英語)を由来とする大量の外来語が挙げられるのではないでしょうか。

もっとも、“アプリ”や“ファミレス“コンビニ”というように、すっかり日々の生活に溶け込んだ“和製英語”があれば、日本人自身も知っているつもりだけの用語も少なくありません。長野県の乳製品製造会社である安曇野食品工房が2019年8月に20~50代の会社員300名を対象に行った「実は意味が分からずに使っているビジネス用語ランキング」という調査結果がありますのでご覧ください。

 

第1位:コミット、ローンチ

第3位:KPI

第4位:バッファ

第5位:アウトソーシング、ブレスト、アジェンダ

第8位:シナジー

第9位:プライオリティ、スキーム、ブリーフィング

第10位:ユーザーインターフェイス(UI)、アサイン、コアコンピタンスアジャイル

 

楽天」は「乐天」にあらず!?

 

 

これら日本語でカタカナ表記されたものは、ほぼすべて中国語では漢字表現されます。「コミット」なら「承诺」、バッファなら「缓冲器」、プライオリティなら「优先顺序」といった具合です。ハリウッド映画のタイトルがカタカナ一辺倒の日本に対して、中国では適当な訳に改められて公開されるのが相場だといえるでしょう。

とはいえ、漢字が万能というわけにはいかないケースもしばしば見られます。日本の「中国銀行」はあいにく中国では漢字表記では活動できないそうで「日本CHUGOKU銀行」とか。そういえば、ECモールの「楽天」も中国語での表記は「楽酷天」でした。

 

 

ついでにいえば、中国で「楽天」といえば、食品メーカーの「ロッテ」ブランドのことを指します。一方、プロ野球パ・リーグの球団名を漢字で表記すると、なんともややこしいのですが、千葉ロッテマリーンズは「千葉羅徳海洋隊」、東北楽天ゴールデンイーグルスは「東北楽天黄金老鷹楽隊」です。

 

中国人が思わず唸る和製漢字

 

 

カタカナ語の表記をどんな漢字に当てはめるか苦心することがあれば、日本語ならではのオリジナル漢字――「和製漢字」――に手を焼くこともあるでしょう。

たとえば、「畑」「辻」「笹野」といった名字の方を前に首をひねる中国人も少なくないはずです。あるいは「凪(なぎ・な(ぐ))や「凩(こがらし)」を漢字一字で表現できず、文字数を極限まで減らせるという本来の中国語が持つメリットを発揮できないことに忸怩たる思いをしている人もいるのではないでしょうか。

一方、「躾」という漢字に、伝統を大切にする日本の気概を感じたと肯定的にとらえてもらえるケースもあるかも知れません。

ただ、こうした「国字」とも呼ばれている「和製漢字」が、現代の日本人にとっては“難読”漢字として扱われるケースも増えてきているようです。「遖」と書いて「あっぱれ」、「埖」は「ごみ」、「轌」「艝」は「そり」、「俤」は「おもかげ」、「錻」は「ぶりき」……やっぱりハードルは高そうですね。

 

 

伝統的「和製符号」にも関心

 

和製漢字のほか、中国でも知る人ぞ知る存在に「和製符号」があります。締め切りを意味する「〆」、郵便番号「〒」、音声記号「♨」、マス記号「〼」等は、訪日観光客の増加とともに、認知度が高まってきているのではないでしょうか。

そのほか、「ORZ」こそ近年は廃れてきていますが、「www」を始めとしたネットスラング、あるいはSNS上で使われる「表情符号」は、日中のコミュニケーションの壁を超え、国を違えず共有されているきらいがあります。

ちなみに入力ツールの「Simeji」が発表した「今年の顔文字大賞2019」 は、「どや」( ・´ー・`)だったそうです。「“映え”から“どや”へ――」。表情スタンプにも、改元とともに新たなトレンドが生まれる予兆かも知れませんね。

 

 

ついでにご紹介しておきたいのがJK語。流行に敏感な女子高校生(JK)の 流行語に選ばれたのが、「1位:ぴえん」(泣き声の「ぴえーん」の省略形)、「2位:べびたっぴ」(「タピオカドリンクにストローを刺すときの掛け声」)、「3位:KP(乾杯)」とか。同じ日本人であっても世代が違えば理解不能な“宇宙語”に等しいこれらの言葉を、果たして中国ではどのように解釈してもらえるのか興味を引かれるところです。

(文:耕雲)

【先週のパズルの回答】

 

 

南辕北撤  nán yuán běi zhé

〈成〉を南に向けながら、車を北に走らせる。※轅(ながえ):馬車・牛車の前方に長く出た、平行な二本の棒。

 

走南闯北  zǒu nán chuǎng běi

〈成〉(何かの目的で)多くの地方を旅する。各地を遍歴する。

 

大江南北  dà jiāng nán běi

長江の南北、大陸の各地

 

声势浩大  shēng shì hào dà

勢いがすさまじい、壮大な

 

声嘶力竭  shēng sī lì jié

〈成〉声はかれ、力は尽きる、声を限りに叫ぶさま

 

自不量力  zì bù liáng lì

〈成〉自分の力をわきまえない.自分の力を過信する、身の程知らず

 

祸不单行  huò bù dān xíng

〈成〉災いはよく重なって来る、泣きっ面に蜂、弱り目にたたり目

 

天马行空  tiān mǎ xíng kōng

天馬が空を行く(自由奔放であること)