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“ディズニーの季節”に大連をめぐる椿事 「都市LOGO」コンペ入賞作品はパクリ!?

 

クリスマスシーズンと言ったらディズニー!? 「連想ゲーム」(古い!?)をしたらそんな答えがすぐに返ってきそうですが、本日の話題の主役はミッキーマウスではありません。さる12月12日に発表された「都市ロゴ」コンペ入賞作品に“パクリ”疑惑が持ち上がり、ネットで批判の矢面にさらされた大連市です。じつは、大連には“パクリ”疑惑(?)の誹りを受けながらも、熱い視線が注がれる話題が他にもあるのです。

パクリと見破られなかった!?

 

 

大連市が観光促進を目的に実施したデザインコンペで、入賞した作品がディズニーのロゴに酷似。その結果、ネットは騒然……。

折りしも無印良品が商標裁判で敗訴するというできごとがあったばかり。今回の騒動に対するネットユーザーの関心はひときわ高かったように見受けられます。

12月12日に大連市が「第1回大連文化創意旅游紀念品大賽」の入賞作品として発表したのはLOGO、ポストカード、パッケージ、iPadカバーなど計34項目の作品。どれも3か月に渡る「厳正な審査」を経て選ばれたとされ、LOGOの入賞作品には、イルカと灯台、そして大連という文字が「色鮮やかに」表現されているというのが組織委員会の評価でした。

しかし、入賞作である「大連城市LOGO」を見てみると、「あれ、どこかで見たような……!」と思わせるデザインなのです。ネットで批判コメントが相次ぐのもやむを得ないかも知れません。

“融梗”と“オリジナル”の間

 

 

CNN日本によるネット報道が拡散されたこともあって、この話題については、Twitterでもさまざまな書き込みがされています。

微博とTwitterで見られたツイートをいくつかピックアップするとざっとこんな感じです。

「すわっ、ディズニーが大連を買収した?」

「恥知らずだ。観光局がこれ選んじゃうのはやばい」

「なんでディズニーなんてバレやすいものをパクる?」

「観光局を騙すのはたやすいようだ」

……。

 

 

こうした一連の批判コメントを受け、大連市文化和旅游局も12月17日に反応。微信公衆号などのルートで、関連方面に対する調査に速やかに着手することを公言しました。さらに、「ルールに従い、参加者は全員が自らの提出物の著作権保有していなければならない」と説明しています。

今回の問題では、ロゴ作成者が「ディズニーの公式フォントを転用した」可能性が高いと言われています。そして、ネットでは「中文毛筆字」の出所についても疑問だとするコメントが見られました。

なんだか疑惑のオンパレードのようですが、もしかしたら作成者は、“Good designers imitate, great designers steal.(優れたデザイナーは模倣し、偉大なデザイナーは盗む)”ぐらいに開き直っていたのかも知れませんね。

 

 

先だって発表された「中国2019年10大流行語」の一つに「融梗(róng gěng)」 があります。「他人の創作物にアレンジを加え、二次創作を行う」という意味で、要するに「パクリネタ」です。

果たして“パクリ”と“オリジナリティー”の境界線をどこに引くべきか、その判断をめぐる攻防の行方は関係者でなくても気になるところです。“無印良品”の一件についても、ネットでは勝訴した”山寨版”(写真)に対する批判的なコメントが目立ちました。デザインのオリジナリティー等、著作権に対する中国人の意識は確実に向上しているといえそうです。

“ロマンチック都市”の2つの「D」

 

 

大連市が掲げる都市のスローガンに「浪漫(ロマンチック)都市」というものがあります。“パクリ”疑惑のロゴの作成者も、おそらく大連の「D」からディズニーを想起したのではないでしょうか。

じつは、大連にはもう一つ重要な「D」の存在があります。「国家5A級観光リゾート地」の金石灘エリアにあるテーマパーク、「大連発見国」です。その英語の表記はまさに、「D」を頭文字とする「Discoveryland」なのです。

 

このファミリー客向けレジャースポットはスケールが大きく、人工池を中心に広がる47万㎡の敷地にジェットコースターなどの絶叫マシンやメリーゴーランド、ゴーカートといったアトラクション等、さまざまな施設が配置されています。「大連版ディズニーランド」と称されるだけあります。

とはいえ、かりに今回の“パクリ疑惑”の渦中にある「LOGO」が同スポットで使われる運びとなったらどうなっていたでしょうか。それこそネットは大炎上必至です。

ついでに蛇足。大連から高速鉄道で2時間ほどの距離にある丹東の観光スポット、鳳凰山でちょっと目についたお店がありましたので、写真(下)をご紹介します。

これをご愛敬と言ってよいかわかりませんが、「KFC」ならぬ「KFG」……です。あいにく“画竜点睛”とはいえない事例です。

 

大連で進行する「小・京都」プロジェクト

 

 

大連・金石灘には、もう一つ、京都“パクリ”疑惑(!?)があります。巨大テーマパーク建設プロジェクト「大連金石灘京都風情街・小京都」のことです。

プロジェクトを担うのは、金石灘エリアで日本式温泉ホテル「湯景澤」と和風高級別荘(196棟)を手掛けた大手ディベロッパー「大連樹源科技グループ」。日本の大手建築会社のコンソーシアム「JCAP7」、宿泊関連施設協会「JARC」と協力し、京都の二年坂、三年坂の街並みをモデルにした「純和風商店街」を造りあげようというのですから、度肝を抜かれます。

その第一期工事が7月28日、正式にスタートしており、日本メディアもこれを大きく取り上げたことから、久々に大連の名前が日本全国に轟くことになりました。

 

 

「小京都」の建設では、純和風の建築スタイルと、職人の技術(匠)を凝らし、物販だけでなく、日本の文化を体験できることをコンセプトに、日本からの建築士の参加はもとより、屋根や建材なども極力日本産が投入されるそうです。

総投資額は60億元(約960億円)で、総面積64万平方メートルというとてつもないスケール。大型日本庭園、イルミネーション、滝、フラワーガーデン……唐の時代と和風建築が融合した街並みを念頭に置いているといわれ、もはや“パクリ”と言えるレベルのものではありません。

日本側からの徹底した監修で、「小京都」が完成の日を迎えたとき、果たして本家の京都との間にはどんな関係が築かれているのか興味深いところです。

 

奇しくも「大連」とは“おおむらじ”とも読みます。“おおむらじ”とは大化の改新以前に大臣 (おおおみ)と並び、最高官と目された役職を指しています。

大連は歴史が浅い都市とされながらも、じつは日本の古都とも強い絆で結ばれる運命にあったのかも知れません。(文:耕雲)