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白銀の世界を“ブラック”で染める!? 京張高速鉄道の“スマートトレイン”

 

「京滬(けいこ)高速鉄路(北京―上海)」が1月16日に株式上場。中国の“景気減速”が取りざたされながらも、ドル箱路線の収益が今後のインフラ整備を支えていくと報じられています。一方、昨年末に開通した「京張高鉄」は最高時速が350Kmとイケイケドンドンの様相。“減速”運転の気配はありません。同路線の“凄さ”をピックアップしました。

京張高鉄とは?

 

 

「京張高鉄(京張高速鉄路)」は、19年12月30日に開通した、北京市と河北省張家口市を結ぶ総延長約174キロの高速鉄道です。2022年北京冬季五輪パラリンピックの競技場間の交通を確保する重要な路線と目されており、2016年6月25日の着工からわずか4年弱で営業開始にこぎつけました。

とかく日本はオリンピックという大型イベント開催と高速鉄道(新幹線)の開通を結びつけて考えるきらいがあるのではないでしょうか。1964年の東京五輪しかり、1998年の長野冬季五輪しかりです。しかし、日本でいえば東海道新幹線に相当する京滬高速鉄道(上海―北京)が開通したのは11年6月のことです。北京五輪(08年)、上海万博(10年)のの開催に間に合わなかったことになります。

それだけに、“冬季五輪路線”が早々と開通したことに、中国の気合の入れようが伝わってきます。

 

“世界最高速”を達成

 

 

この路線が開通したことの最も大きな意義は、やはり何と言っても“時短”です。現在、世界の営業路線で最速とされる時速350kmを達成し、これまで3時間以上かかっていた北京―張家口をわずか47分で結んでしまいました。張家口と内モンゴル自治区のフフホトを結ぶ高速鉄道「張呼高鉄」とも接続しており、北京ーフフホト間も最短運行時間が約9時間から2時間に短縮しています。北京ー大同(山西省)もわずか1時間40分です。

そんなスピードを極めた高速鉄道と比べ、京張鉄路(1909年に開通)の運行速度は当初、時速35km程度だったと言われています。黒煙を吐く蒸気機関車が牽引する車両にガリ版刷りのきっぷを握りしめて乗り込んでいた時代があったとは、いまとなっては信じがたいことです。

(注)

2020年1月現在の営業路線を対象にしました。

鉄車輪式列車以外では、「上海トランスラピッド(磁気浮上式鉄道)」が最高時速431Kmで運行し、ギネスブックに“世界最速の商業列車”として登録されたことがあります。

・鉄車輪式列車の走行試験では、フランスのTGVが1990年の時点で時速500㎞超え(515.3㎞)を達成しています。

・実験路線では2015年にJR東海の電導リニアが時速603㎞を記録しました。

(以上、サイト情報より。)

“オリンピック村”にも直結

 

 

京張高速鉄道は北京の交通ハブである北京北駅から昌平区、延慶区を経て河北省張家口市に至るまで合計10の駅があります。下花園駅からは、「崇礼オリンピック村」と指呼の間にある太子城駅まで支線が敷かれており、これまで運行された“体験列車”では、北京北駅から太子城駅までが最速1時間04分、清河駅から太子城駅までが50分となっています。乗車料金も100元程度です。

 

 

「崇礼奥運村」の南ゲートから太子城駅まではわずか1キロ、車で15分ほどの距離です。太子城駅にはプラットフォームが5つありますが、そのうち一つが北京冬季五輪専用プラットフォームとなっており、北京冬季五輪の競技が行われている間はシャトルバスとのダイレクトな接続が見込まれています。もちろん、オリンピック村と至近距離にあるロケーションに高速鉄道の駅が設置されたのは世界で初めてのケースです。

一方、京張高速鉄道沿線の駅にも見どころはあります。たとえば八達嶺長城駅は建築面積が3万6千平方メートル、最大102メートルの深さがある地下駅として注目を集めています。

2つのバージョン

 

 

京張高速鉄道で運行される列車には、「スタンダード版」と「オリンピック版」があります。スタンダード版では“スマート運行”の度合いを強め、運転士の負担を限りなく小さくすることをコンセプトにしています。運転士がボタンを押せば、あとは自動運行モードに切り替わり、発車から停車、ドアの開閉等が人手を介すことなく行われます。

一方、オリンピック版の列車は、ウィンタースポーツの祭典ムードを演出する設計になっています。1、4、8号車にはスキー用具をしまうボックスが設置され、乗客はQRコードのスキャンだけで荷物の保管と取り出しができるのです。

さらに、列車内には“モバイル報道センター”が設けられ、北京冬季五輪が開催中、報道関係者はいつでも競技関連のニュースをライブで入手できるのです。

 

“ブラックテクノロジー”を結集

 

 

時速350キロというスピードを実現した背景には、その独特の流線型車両にも秘密がありそうです。空気抵抗は従来の高速鉄道の車両と比べて7%も小さいと言われています。

そのほか顔認証システムが採用された改札ゲート、5Gを完備した車内等、京張高鉄には目を見張るさまざまなハイテクノロジーが注ぎ込まれています。異状を自ら検知するスマート技術で安全性もアピール。「速かろう、危なかろう」という”無人運転”の不安を払拭しています。

ちなみに中国ではハイテクのことを「黑科技」(ブラックテクノロジー)と呼びます。白銀の世界で繰り広げられる北京冬季五輪は、これからも“ブラック”な話題で盛り上がりを見せていくことでしょう。(耕雲)