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マスクはなぜ買えない!?  5倍に増産でも品薄の理由

 

新型コロナウイルス(COVID-19)の拡大を受けて、いまや世界レベルでマスク不足が懸念される事態になってきました。お隣りの韓国では”配給制”(※)が実施されるほどです。一方、中国は大幅な増産体制を実現した甲斐もあって、いっときの枯渇感はないものの、ネット上では「どうして買えない?」というの声もまだまだ根強くあるようです。

 

※身分証の1桁目の数字が1と6の場合は月曜日に、2と7日は火曜日に…という要領で月から金までを割り振り、週末は平日に買えなかった人が購入できるという措置。1人が毎週購入できるマスクの枚数は2枚。

 

 

新型コロナウイルス(COVID-19)が世界を席巻し始める分岐点となった日――それは1月20日でした。この日、中国・国家衛生健康委員会専門家グループ長の鍾南山氏が、ウイルスの人から人への感染の可能性を指摘。その後の経過はご存知のとおりです。中国では途端にマスクが極端に不足する事態となり、1月24日から2月11日の間に海外から中国本土に運ばれたマスクは7億3000万枚にも及んだと報じられています。

 

 

市民は外出を控えるように要請され、マスクを着用せずに戸外に出る人をドローンで摘発する都市も現れました。かくして毎日の暮らしで必須アイテムとなったマスクはたちまち高騰、買い占めや詐欺行為まで横行します。当局の取り締まりと不当な商行為との間で攻防が行われ、ネット上にはニセモノ摘発のために製品の真贋が見分けられるプラットフォームも登場しました。

 

 

アリババグループが発表したデータによると、マスクや消毒液、ハンドソープ、測温計等に対する消費者マインドはここ1か月の間に大きく高まり、マスクにいたっては137倍の規模になったとしています。そして、いまやマスクをめぐる“仁義なき争奪戦”が世界に飛び火しているといったら大げさでしょうか。

 

 

中国は世界最大のマスク生産国です。中国の工信部(工業情報化部)は、新型コロナウイルスが流行する前、中国のマスクの生産力は日産2,000万枚以上、2019年の年間生産量が50億枚であったことを明らかにしています。じつに世界のシェアの2分の1を中国が占めているのです。そこへ来て、中国政府がマスクなどの医療用品の生産に参入した企業に補助金を支給する措置をとったことで、異業種メーカーの参入も相次ぎました。フォックスコンOPPOVivo、BYD、シノペック等、電子部品やスマホ、家電、自動車、アパレル等、多岐に渡るメーカーがマスクの生産ラインを整えていったのです。

 

 

日本人向け深セン情報のポータルサイトの「Shenzhenfan.com」も、深セン地下鉄が使い捨てマスクの生産に乗り出したことを報じています。(https://www.shenzhen-fan.com/news-2020-03-08-shenzhen-metro-is-making-masks/)2交代シフト制で、生産量は1日あたり40,000枚に及ぶそうです。中国は文字通り″挙国一致”で増産に取り組んでいるといってよいでしょう。こうして中国政府は3月2日、中国におけるマスクの生産能力が2月29日の時点で同月初頭と比較して5.2倍に拡大、1日あたり1億1600万枚に達したと発表するまでに至ったのです。

 

 

“世界の工場”の面目躍如といったところですが、じつは、それでも“まだまだ”という現実も浮き上がってきます。たとえば、中国が2019年に生産したマスクは50億枚で、そのうち医療用マスクは27億。しかし、現在、職場に復帰した第二次産業、交通・運輸業に携わる従業員、そして医療従事者で2億3,800万人。彼らが一人あたり1日1枚を消費するとしたら、11日しかもたない計算になります。ましてや、これから次々と企業が業務を再開し、第二次産業第三次産業の従事者合わせて5億3,000万人が1日1枚のマスクを必要とするようになったら……。

 

 

さらに、サプライチェーンの問題もあります。マスクに使われる不織布の主な原材料となるのがポリプロピレン。これ自体は供給が充足しているものの、マスクの製造プロセスで必要となるメルトブロー材料が中国では十分にニーズが満たされていないというのです。したがって、メーカーへの供給価格が高騰し、労働コスト、物流コストの上昇と相まってマスクを増産すればするほど損益がかさむ――そんなメーカーが抱えるジレンマが3月8日付「央視財経」の記事で指摘されていました。

 

 

それでも、花粉症の季節到来も相まってマスクの供給不足が深刻になる日本と比べると、中国ではだいぶ余裕が生まれてきたというのが多くの人の感覚ではないでしょうか。ようやく水際対策の強化に乗り出し、ウイルス拡大が収束する時期さえ見通せない日本に対して、中国では「4月末には感染がほぼ抑制されると信じている(有信心4月底基本控制疫情)」という鐘氏(前述)の発言が多くのメディアで取り上げられています。

 

 

アリババ創業者のジャック・マー氏が日本にマスク100万枚を寄贈したニュースも話題になりました。2月に日本から中国に向けて行った物資の支援に対する返礼だといいます。こうして見ると、わずかの期間で日中の立場が完全に逆転してしまったことに気付かされます。さらに、中国政府がWHO(世界保健機関)に対して2,000万米ドルの寄付を行う決定をしたことを8日、新華社ほか多くのメディアが報じていました。

 

 

マスクについても、これまで世界最大消費国・輸入国である中国に向いていた支援のベクトルは今後、反対に中国から世界各国へと向かっていく気配さえ感じられます。ふと思い出したのが「江夏の21球」。9回裏ノーアウト満塁のピンチを自分で招きながら、終わってみれば火消し役を手際よく演じていたのが中国だった……という結果になることも想定されるのではないでしょうか。

Nanaco [KauKauモール]

3月15日に医療用マスクを入荷予定!

 

ご来店をお待ちしています!

 

表紙デザイン:林佳琪

本文デザイン:柳華恵

文: 耕雲