“プロスペロ公”が日本赤十字の 「絵本アニメ」を見ていたら (1)
「人と人が傷つけあう状況はウイルスよりも恐ろしい」――そんなメッセージを込めた日本赤十字社の絵本アニメがいま日本のサイトで話題になっています。中国のネットでこの話題を取り上げた記事はごく少数にとどまっていましたが、ズシンと重い人間の本性のテーマにもズバリ切り込んだ内容といえるだけに、多くの方とシェアしたい作品です。
(画像出所:日本赤十字社)
日本で新型コロナウイルスの感染が拡大する中、赤十字社が作成した「ウイルスよりも恐ろしいもの」と題した絵本アニメがYoutubeにアップされ、話題になっています。
その作品はまず男性が手を洗うシーンから始まります。
「ウイルスから身を守るためには、手を洗うだけで感染する確率はグンと下がる」
「でも、心の中に住んでいて、流れていかないものがある」
(画像出所:日本赤十字社)
導入部のナレーションでは、こうして不気味なモンスターの存在をほのめかします。
「そいつはお腹を空かせてるみたいで、暗いニュースや間違った情報を沢山食べて、どんどん育ってそしてささやく」
「あの人は病気になったのは誰のせい?ウイルスは広まったのはあいつのせいだ。世界がこうなったのは、あいつのせいだ」
(画像出所:日本赤十字社)
「人と人が傷つけ合い分断が始まる」
アジア人への差別、医療従事者や感染者に対する偏見等が社会問題となり、ニュースで報じられているのを目にすると、いたたまれない気持ちにさせられます。
(画像出所:日本赤十字社)
幸いにして日本で感染者が増加するペースはここ数日間落ち着きを取り戻している感があります。とはいいながら、“隠れ”感染者が増加することへの不安が拭い去れるわけではありません。
「もしも感染していたらどうする。あんな風に言われたらどうする。みんな熱があっても隠すようになる。具合が悪くても元気なふりをするようになる。もう誰が感染してるか分からない」
(画像出所:日本赤十字社)
「鏡を見るとそこにもうあなたはいない。そいつの名前は恐怖」
「ウイルスの次にやってくるもの。もしかしたらウイルスよりも恐ろしいもの」
“恐怖心”が差別や偏見を生み、どんどん“隠れ”感染者を増加させてしまうスパイラルが起きることが容易に想像させられます。感染することよりもっと深刻なのは、恐怖心というモンスターによって心が破壊されることだと絵本アニメは暗示しているのです。
(画像出所:日本赤十字社)
では、恐怖心というモンスターに打ち勝つためにはどうしたらよいのでしょうか。
ナレーションは次のように語りかけます。
「非難や差別の根っこに、自分の過剰な防衛本能があることに気付こう」
「冷静に客観的に恐怖を知り、見つめれば恐怖は忘れていくはずだ」
そんな気づきを踏まえたうえで、絵本アニメは「恐怖が嫌がることをしよう」とアドバイスしています。
(画像出所:日本赤十字社)
「恐怖が苦手なものは笑顔と日常だ」
「家族や友人と電話して笑おう」
「いつものようにきちんと食べて眠ろう」
「励まし合おう」
「応援し合おう」
たとえ旗色が悪い“戦況”をニュースが伝えたとしても、それに振り回されることなく、「正しく知り、正しく恐れて、今日私たちに出来ることをそれぞれの場所で」取り組むようにと絵本アニメは結んでいます。
(画像出所:日本赤十字社)
ところで、「恐怖は誰の心の中にもいる」というナレーションから、ふと思い出したのがエドガー・アラン・ポーのミステリー小説です。まさしく不安と恐怖に満ちた世界。とくに、「赤い死の仮面(赤死病の仮面)」は、新型コロナウイルスについて考えるうえで触れておきたい名作です。(続く)
(文:耕雲)