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プロスペロ公が日本赤十字の絵本動画を見ていたら(3)

 

連載(1)(2)では、日本赤十字、レッドマスク、赤死病の話題を取り上げてきました。今回も懲りずに“赤い顔”をしたウイルスのネタをひとつご紹介いたしましょう。

 

 

赤死病というのは、架空のウイルスでしたが、もう一つ”赤い”ウイルスの話しをしておきたいと思います。

 

ウイルスと言っても、人体に危害を直接及ぼすものてはなく、コンピューターウィルスです。歴代のコンピューターウィルスのランキングでも上位に顔を見せるそのウイルスはレッドコードといい、911事件で世界が驚愕する直前の2001年7月に流行しました。

 

自己増殖型のワームに分類されるレッドコードは、インターネットを一時的にダウンさせたウイルスとして話題になりました。

 

 

名称の由来は、ウイルスの発見者であるプログラマーがたまたま飲んでいたのがペプシコーラの「レッドコード」という清涼飲料水だったとか、ウイルスの流行初期、ウイルスに感染したパソコンに中国語で警告表示があったため発生源が中国だと疑われたことが背景だとされています。

 

 

当時を振り返ってみると、この頃を機に巷で話題となるウイルスのジャンルが、パソコンをフォーマットしてしまうような破壊性が顕著なものから、メールが勝手に送信されたり、重要なファイルが外部に流出されたりするなど、ネットユーザー間の信頼関係を傷つけていくタイプがメジャーになっていった印象があります。

 

ちなみに、このコンピューターウィルスの流行について取り上げた当時の記事を拾ってみると、病原ウイルスの話しとなかなか似通っていて興味を引かれます。

 

 

「このウイルスの特徴として、ネットに接続しているサーバーに自動的に感染」(飛沫感染)

 

「メモリ上でのみ感染し、ハードディスクに痕跡を残さなず、発見が非常に困難」(無自覚感染)

 

「OSにあるプログラムのバグを修正しないと、すぐにまた被害にあう」(再感染)

 

「感染防止のためのセキュリティアップデートが必要」(アルコール消毒手洗いうがい、マスクなど)

 

「インターネットモラリティーを引き上げることで、初心者にも身を守るすべを教えなければいけない」(出口戦略と庶民への啓蒙)

 

 

一方、ネイティブメディアというサイトが3月に掲載した「新型コロナは人類史上初の思考に感染するウイルスかもしれない」というレポートは示唆に富んでいます。(https://nativ.media/16738/)

 

そもそも新型コロナウイルスはコンピュータウイルスに非常に近いと指摘しているのです。

 

同記事では、「ホモサピエンスの進化の最大のポイントは認知革命によって人類が初めて概念を共有できる能力を身につけたこと」という近年のベストセラー本「サピエンス前史」の一文を引用した上で、今回の新型コロナウイルスが「この人間を人間たらしめた特性そのものを直接的に攻撃するウイルス」だとずばり指摘しています。

 

 

「思考の撹乱を最大限に引き出すという画期的な新戦略を実行しているウイルス」

 

「効果的に人間の思考を惑わすことで人類にダメージを与える一番効果的なタイプ」であり、「侵された思考が起こす行動自体が私たちは物理的に傷つけるというのが今回の最大の特徴」だというのです。

 

 

これらの指摘は思い当たるところは実に多いのではないでしょう。アジア人差別や医療従事者に対する偏見にはじまり、最近では「コロナ自警団」という、まさに思考の破壊と思われる現象が日本各地で現れていると言われます。政府による外出自粛の要請が長引き、それが自粛に従わない人を責める風潮に発展しているというのは何とも由々しき事態です。

 

 

東日本大震災の際は、冷静で秩序を伴った対応で民度は世界一と賞賛されていたことを思うと、大きな落差さえ感じられます。人類の思考に挑戦する進化ウイルスの脅威を前に私たち日本人にとって大きな試練であり、まさに正念場に立たされているといっても過言ではないかも知れません。

(続く)