ヤマハの“黒科技”報道、なぜか実証実験地を書き換え!?
テレビやネット中継で観戦するファンの声援・拍手をスタジアムの選手に届けよう――そんなコンセプトで大手楽器メーカーの「ヤマハ」が開発した“リモート応援システム”の実証実験が27日、静岡県磐田市の「ヤマハスタジアム」で実証実験が行われ、ネットで話題になっています。
■心はずませ選手に届け!
日本では、プロ野球は6月19日から、Jリーグは同月27日もしくは7月4日からの開幕が目されていますが、新型コロナウイルス感染症の拡大防止策を念頭に“無観客試合”となることが想定されます。こうした中、ヤマハが開発した「リモート応援システム」に熱い視線が注がれています。
このシステムはスマートフォンなどで使える専用アプリで、モニター上に表示される「歓声」や「拍手」などのボタンにふれると、スタジアムに設置されたスピーカーを通じて選手に歓声や拍手を送られるというものです。ファンが自分の声をそのまま届けることもでき、地元紙静岡新聞の報道によると、27日に磐田市のヤマハスタジアムで行われた実証実験では、特設した26台の既設の音響機器を通し、スピーカーで、音の大きさや響き方等を開発担当者たちが念入りにチェックを行ったとしています。
■中国ネットの反応
このニュースに中国ネットも飛びつき、テクノロジー関連のニュースを配信する「快科技」や、ショートムービー等を扱う情報サイト「梨視頻」の微博公式アカウントが記事として配信しました。微博では、「#雅马哈公司推出远程喝彩软件#」(ヤマハがリモート喝采アプリをリリース)と題したハッシュタグが付けられ、ネットユーザーによるコメントも寄せられています。
ネットユーザーのコメントでは、「実のところは現場にいるならもっと参加している意識が高まるんですけどね」と、やはりリアルな観戦体験を望む声がある一方で、日本ならではの“黒科学”(ハイテクの意味)に高い関心が見られます。「カラオケボックスやKTVの喝采機能を思い出した」「ある意味、コロナが科学技術の進歩を促しているといえる」「ヤマハがまたテクノロジー・ツリーを弄び始めた」「隣人宅にはこれまた迷惑な話しだ」というように、実用化を心待ちにしている声もありました。
■なぜか書き換えられたスタジアム名
ただ、中国での報道の仕方について気になったことが一つあります。NHKを始め日本の報道では、当該のシステムの実証実験地を「磐田市のヤマハスタジアム」としてあるのに、中国の報道では、「能容纳5万人的静冈县体育场(5万人を収容できる静岡県のスタジアム)」と書き換えられているのです。
「磐田市」の知名度が低いからでしょうか。同市の人口はわずか約17万人程度。それに市のホームページを見るかぎり、中国には同市と友好都市関係を結ぶ都市はなさそうです。しかし、中国人が磐田市を意識する機会はほとんどないかと思いきや、中国のニュースサイトで「磐田」を検索すると、「磐田喜悦」(ジュビロ磐田)に関する記事がズラズラとヒットするのです。とてつもない数のサッカーファンが存在するのが中国です。磐田市のことは知らなくても、ジュビロを通して「磐田」の名前を見たこと(聞いたこと)があるという人は意外に多いのかも知れません。
一方、県の傘下に市があるという日本の行政制度になじみがない中国人からすれば、“静冈县体育场(静岡県のスタジアム)”と記されていることで、とんだ田舎の球場ではないかと勘違いする人がいても不思議ではありません。中国で県といえば、区よりも下のランクだからです。果たして“磐田”の名前を伏せ、わざわざ“静冈县体育场”と書き換えるのは妥当だったのでしょうか?
■知られざる「磐田」の著名人パワー
以上、中国での報道に難癖をつけてしまいましたが、あまり疑心暗鬼になっても仕方ありません。とりあえず、テクノロジー記事を通したせっかくのアピールの機会を逸してしまった磐田市に援護射撃をするつもりで、最後に同市のPRをさせていただきましょう。
同市は、すでに触れたJリーグのジュビロ磐田だけでなく、ジャパンラグビートップリーグのヤマハ発動機ジュビロの本拠地でもあるなど「スポーツのまち」として存在感を誇示しているほか「産業のまち」でもあります。ヤマハ発動機やスズキのオートバイ・自動車工場、河合楽器製作所や東洋ピアノ製造のピアノ工場、浜松ホトニクスの電子管、半導体製造工場、地場産業であるベルベット・コーデュロイといった繊維産業、その他に香料(高砂香料工業)などの製造拠点があります。
そして、最後に取り上げておきたいのが、中国人(とくに若い世代の方)にとってもとてもなじみがある有名人を“量産”していることです。以下、中国のニュースサイトでも関連記事が多くヒットする4人の有名人をピックアップしましたのでご参考まで。
③伊藤美誠
卓球で世界ランキング2位。中国の卓球ファンが最も“強敵”として意識する存在。
④深川麻衣
⑤水谷 隼
リオ五輪で日本人初となるシングルスの銅メダル。ITTF世界ランキング最高位は4位。