Nanaco

あなたの海外生活はお任せあれ!

“チンチン電車”とは呼ばせない! 上海・松江「LRT」環状線が開通

 

高架道路や地下鉄、高速鉄道等、日本の交通インフラはこれまで中国にとって格好のモデルであった……はず。ところが、LRT(ライトレールトランジット、次世代型路面電車システム)については中国の方が大きくリードしているといえそうです。8月10日、上海・松江のLRT「T2」が環状線化しました。数年中には計6路線で運行され、総営業距離は100キロにも達するそうです。

 

上海は「地下鉄」網の営業距離数が世界で最も長い都市です。今後、郊外私鉄線との相互直通運転が可能な東京や大阪のようになっていくのかどうかは予断が許されませんが、計画では2020年には路線数が20、総距離数が830キロという巨大ネットワークが構築されるといわれています。

一方、軌道交通網とは別に、東京や大阪にはない新たな交通網も充実してきました。それが、LRT(軽量軌道交通、Light Rail Transit、ライトレールトランジット)です。

LRTは、低床式車両を活用した“次世代型路面電車システム”と説明されることが多く、“チンチン電車”(写真上:中国語では“鐺鐺車”。大連市の201系統が有名)とは一線を画しています。“チンチン電車”はほのぼのとしたノスタルジーを誘う魅力がありながら、一方で「いらつく、うざい、遅い」と批判されがちです。これをLRTへと転換を図っていくのが大きなムーブメントとなっているのです。(写真下:富山市LRT。日本では、海外のLRT事情を深く研究し、街づくりにうまくマッチさせている成功事例として挙げられています。)

なお、軌道交通等に関する情報ポータル「e車ネット」によると、中国大陸エリアで2019年現在、路面電車が運行されている都市は17都市あり、さらに48の都市で新たな建設が予定されているそうです。

 

 

上海では現在、上海張江高新技術産業開発区(張江ハイテクパーク)と松江区にLRTが導入されています。

とくに新興の軌道交通技術が導入されているのが松江区のLRTで、現在T1(1号線)とT2(2号線)の2路線が運営されています。

T2は環状線(全長12.864キロ、計20停車駅)です。その開通日に当たった8月10日は台風に見舞われ強風が吹きつける悪天候でしたが、トラブルもなく正常に運行されました。今後、LRTが同エリアの交通インフラの主役として発展していくことが期待されています。松江区のLRTは、車道や歩道とは別に独立した軌道を設けています。ゲージは標準軌の1,435mm(4フィート8.5インチ)で、列車は5両編成、300人の収容が可能と報じられています。運行速度は時速20キロとか。日本では都市によっては表定速度が時速10キロ前後に過ぎない路線もありますから、まずまずの速度といえるのではないでしょうか。

上海・松江区の路線図を眺めていると、なんだか「丸い緑の山手線 真ん中通るは中央線」(「リパブリック賛歌」のメロディーに乗せたヨドバシカメラの広告)とでも口ずさみたくなります。どこか富山県の「セントラム」や1990年代の北京地下鉄の路線図にも似ています。環状化と放射線状に路線延長を図っていくのがベースにあるのでしょうね。

なお、上海・松江のLRTは、2020年には、合計6本の路線の敷設が予定されています。

 

 

上海・松江は観光資源が豊富なエリアです。上海の1930年代の街並みを再現させた「上海影視楽園」や唐代の北宋塔「方塔」、豫園などとともに上海5大古典園林に数えられる「酔白池」、考古学ファンに必須スポットの「広富林遺跡」、そのほか植物園やレジャーランド、上海で唯一の山「佘山」もあります。

LRTを使って手軽にアクセスできるのが「泰晤士小鎮」です。「古鎮」のような風情とは無縁で、あくまで人工の観光名所ですが、それでも結構ユニークなスポットです。英語名称はなんと「テームズタウン(Thames Town)」。その名のとおり、周囲は川に囲まれており、英国の雰囲気を味わってもらうのが建設コンセプトだったと見られます。敷地内にはシェークスピアチャーチルの彫刻があったり、教会がでんとそびえ、新婚さんにとっては格好の記念撮影スポットになっています。

さらに美術館や博物館、それにグルメストリートもあります。中華だけでなく、数々の洋食、和食、松茸料理の店で舌鼓を打つのもよいでしょう。

「泰晤士小鎮」で、もうひとつ必見スポットとしておすすめしたいのが「鍾書閣」です。

「鍾書閣」はネットでの投票で上海の「美しすぎる書店」として選ばれたこともあるそうです。床下にまで古書を敷き詰め、書籍の殿堂らしく平凡な階段に至るまでユニークな内装が施されています。日本の蔦屋書店を意識したといえばそれまでかも知れませんが、本を読まなくても買わなくても、屋内を眺めるだけでも値打ちがありそうです。上海の地下鉄9号線「松江大学城」はLRTとバスのターミナルにもなっています。乗り換えは便利で、さらには降車駅からシェアリング自転車を活用するという手もあるでしょう。もちろん、Nanacoアプリでハイヤーを呼び寄せ、行動範囲を広げていただいてもよいかも知れません。

松江については機会を改めてレポートさせていただきます。

(レポート:高野耕雲)

 

上海の観光情報をNanacoの電子雑誌ライブラリー「フリマガ」でチェック!上海市文化観光局が発行する観光ガイドを多数配架しています。

 

「フリマガ」ライブラリーの使い方

 

 

「フリマガ」に配架中の媒体

(2019年8月23日現在)

上海市文化観光局/中智日企倶楽部/日本貿易振興機構ジェトロ)「スタイル」シリーズ/JIN マガジン(天津)/こみゅにけーしょん青島(青島)/TOKOTOKO(北京)/Whenever大連(大連)/コンシェルジュ大連(大連)/コンシェルジュ上海(上海)/Marco日商務文化情報交流視点(上海)/杭州Navi(杭州)/LOOK大連(大連)/無錫新呉区へGO!(無錫)※順不同