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新型コロナ対策で大切なことはみなウルトラセブンが教えてくれた!?(1)

 

3回に渡る連載『“プロスペロ公”が日本赤十字の 「絵本アニメ」を見ていたら』では、日本赤十字、レッドマスク、赤死病、コード・レッドという具合に、“レッド”を切り口にしたお話しをさせていただきました。

 

今回取り上げるのは“レッド”色のウルトラマン――ウルトラセブン――です。折しもUFO目撃情報が多発し、河野太郎防衛大臣航空自衛隊の「宇宙作戦隊」発足を発表したばかり。精鋭隊員による特殊部隊「ウルトラ警備隊」に思いを馳せた方も少なくないのではないでしょうか。

半世紀の時を越えて

 

 

特撮ドラマ「ウルトラセブン」が放送を始めたのは53年前の1967年(昭和42年)10月1日(中国の国慶節ですね)のことです。ドラマの概要を簡単にいえば、知性を持った宇宙人による地球侵略を阻止するためにウルトラセブンとウルトラ警備隊が戦いに挑むというもの。ざっくり見て「宇宙SF」のジャンルとして見てもよいのではないでしょうか。ちなみにスタンリー・キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」は1968年4月の公開ですから、ウルトラセブンの登場のほうが早かったことになります。

 

いまやウルトラマンシリーズ最高傑作という呼び声も高い「ウルトラマンセブン」ですが、シリーズ前作の「ウルトラマン」と比べますと、視聴率が低迷し、一年にわたって放送が続けられたものの、資金繰りに苦しむ時期も続いたというエピソードが残っています。

 

 

ウルトラセブンはその後、再放送の度に評価が高まっていったと見てよいでしょう。中国でも「賽文·奥特曼」という作品名で人気を博しました。ただし、“ウルトラマンセブン”と呼ぶのは間違いですから、本来なら“奥特・赛文”と表記するのがベターといえそうです。

想像力豊かなストーリー設定

 

 

半世紀を経た今でもウルトラセブンにはまってしまう人が少なくないのは、この作品が単に勧善懲悪をベースとする子ども向け番組でないことが大きいでしょう。そもそもウルトラセブンの主人公はモロボシ・ダンという人間に姿を変えた宇宙人です。この点からしてユニークな着想です。さらに登場する宇宙人(怪獣)にもさまざまなメタファーが与えられ、ストーリーに深みが増しています。

 

メインライターを務めたのは金城哲夫さん。それに今年1月に他界された上原正三さん(「帰ってきたウルトラマン」のメインライター)も多数の脚本を手掛けています2人はともに沖縄出身。、米ソ間の軍事競争や宇宙開発競争が激しいなか、まだ日本に復帰を果たせず、米国の施政下に置かれていた当時の沖縄に対する熱い想いが伝わってくるストーリーも見られます。

伸縮自在のヒーロー

 

 

もちろん、特撮ヒーロー物の代表作という視点から見てもウルトラセブンは異彩を放っています。たとええばアメリカの変身ヒーローにはどんなものがあるか思い浮かべてみましょう。スーパーマンスパイダーマンバットマン……どれもが等身大ヒーローであることに気づくことでしょう。

 

それに対して、ウルトラセブンは身長40メートルに大型化するかと思えば、一寸法師どころのレベルではない、ミクロの姿にまで変身してしまうのです。

 

 

第31話「悪魔の住む花」という回では、ウルトラセブンが極限まで小さく変身します。フルハシ隊員役で出演していた毒蝮三太夫さんのブログにも「ウルトラセブンにウイルスが出てくる話があったんだよな」とこの話しを取り上げています。

“ウイルス”と戦うセブン

 

 

「悪魔の住む花」の脚本を手がけたのは、先にも触れた上原昭三さんです。ざっとあらすじを言えば、花を嗅いだことで少女の体内に宇宙細菌がしのびこみ、ウルトラセブンが変身して少女の体内で細菌と闘うというもの。自己増殖するというより生物に寄生するという点では“細菌”というより“ウイルス”と呼ぶほうが妥当かも知れません。

 

 

ともあれ、“宇宙細菌”が人間の呼吸器から侵入し、現在の医療技術では根治できない感染症を起こすなかで、ウルトラマンセブンは石鹸の泡のようなものを手から発して相手を倒します。なんだか“手洗い”励行というメッセージかのようです。

遠い“未来”の話?

 

 

米国映画ミクロの決死圏にヒントを得て制作されたとされる「悪魔の住む花」は他にも見どころがあります。ダリーと名付けられた“宇宙細菌”の姿からはサルバドール・ダリのひげを彷彿させますし、この作品が大女優・松坂慶子さんのデビュー作だったというのも驚きです。

 

さらに、ダリーとの闘いで描かれた世界はまるで今日のナノテクノロジーの世界を予期したかのような印象さえ受けます。通信が可能なウエアラブルデバイス等、さまざまな未来型アイテムを観察するのもなかなか楽しいものです

 

ウルトラマンセブンで秀作と思われるストーリーは数多くありますが、新型コロナウイルスからめて次回、もうひとつ作品を紹介したいと思います。

(続く)(耕雲)