中華圏で「年度漢字」が揃い踏み 英米辞書も「今年の言葉」を発表
案の定というべきでしょうか。先月に微信公衆号Heynanaco(11月25日付)でも取り上げた、「今年の漢字」についての話題です。日本で応募数1位に選ばれたのは大方の予想どおり「令」でした。一方、中華圏での「年度漢字」も出揃いました。英米辞書が選んだ「今年の言葉」と併せてご紹介しましょう。
「国内」は楽観、「国際」は悲観!?
比較的ポジティブな「国内」漢字に対して、「国際」の方は漢字、ワードともにネガティブなものが選ばれています。「穏」に関連する中国語には、「稳就业、稳金融、稳外贸、稳外资、稳投资、稳预期」があります。「高度経済成長」から「安定成長」にシフトし、それが「ニューノーマル(新常態)」となった世相を反映していると見てよいでしょう。
なお、「年度漢字」のほか、人民網が2019年の成語を発表していますのでご紹介しましょう。
[2019年度成語]
“奋七直追”
(70年の奮闘、夢を求めてひたすら前進)
(出所:中国新聞週刊)
海の外は“困” “騙” “乱”
中国本土のほかにも、各国・エリアで「年度漢字」がいくつか発表されています。
[マレーシア2019年度漢字]
“騙”
『星洲日報』の報道によると、マレーシア漢文化センターが12月8日に主催したマレーシア中華大会堂総会で「年度漢字」イベントが行われました。そこでは、同国の政情などを背景に「騙(Pian4)」が年度漢字に選ばれています。
[2019中国・台湾年度代表字」
“亂(乱)”
「亂」(乱)の提案者は、著名映画監督の李安(リー・アン)氏と、台湾清華大学の名誉教授の李家同(リー・ジアトン)。台湾鉄道で起きた脱線事故、年金改革、教育改革などが背景にあるようです。
[2019海峡両岸年度漢字]
“困”
厦門《海西晨報》、台湾《旺報》、厦門市書法家協会、台湾中華書学会、新浪網、ZAKER 等が12月13日、台北で「2019海峡両岸年度漢字コンテスト」を実施。103万票が“困”に投票されたそうです。
[2019フランス年度漢字]
“亂(乱)”
フランス華僑華人会が12月18日にパリで催したセレモニーで発表。欧洲華語広播電台の報道によると、“乱”が獲得した票数は32%に及び、圧倒的な支持のもと「2019年度漢字」に選ばれました。
英語辞典が選ぶ「今年のワード」
“困” 騙” “乱” ――中国本土以外で発表された「年度漢字」を見て見ると、どれも由々しき問題を示唆しているようで、とても“穏”やかな気持ちにはなれませんね。
日本については、今年も大きな災害に見舞われながら、投票数がトップだった「令」以外に「新」(2位)「和」(3位)「変」(4位)等、災害とは関係のない漢字が選出されました。“令和”への改元で“新しい変化”の到来を望む民意が反映されているのでしょう。
なお、「今年の漢字」を紹介したついでに、英米豪の英語辞典・辞書サイトが発表した「今年のワード」を以下まとめてみました。人類全体に共通した切実な問題を提起した言葉もあります。
[Oxford Dictionary]
●オックスフォード英語辞典/牛津词典
英:climate emergency
日:気候非常事態宣言
中:气候紧急事件
[Collins Dictionary]
●コリンズ英語辞典/柯林斯词典
英:climate strike
日:気候ストライキ
中:气候罢工
[Cambridge dictionary]
●ケンブリッジ辞典/剑桥词典
英:upcycling
日:アップサイクリング(古いものを加工して新しいものを製造すること)
中:升级回收
[American Webster's dictionary]
ウェブスター辞典/美国韦氏词典
英:they
日:彼(ら)?
中:TA?
[Dictionary.com]
ディクショナリー・ドットコム
英:existential
日:存在する、実存する(形)
中:存在的
[Macquarie Dictionary]
マッコーリー辞書/麦考瑞词典
英:Cancel culture
日:キャンセル文化
中:取消文化
中国のネットで“TA”が氾濫
ウェブスター辞典(メリアム=ウェブスター)が選出した「they」という言葉は単数形で使用されるのがミソです。関連記事によると、「男性でも女性でもない(該当する性別がない)とか、決めたくないといった、男性/女性の典型的な二分法(バイナリー)に当てはまらない方を指す際に使われる」と解説されています。
ふと気づけば、中国語のサイトでは、「彼(他)」なのか「彼女(她)」なのかを選別せず、「TA」と記載するケースが一般化しているようです。要は「they」から来た言葉なのでしょうか。中国人には名前を見ただけでは性別がわからないことが多い印象があります(※日本でも最近は男女共有の名前が増えてきているようですが…)。「they」を受け入れやすい土壌が元々あったとみてよさそうです。
それにしても、ちょっと遡れば、性別どころか「Mrs」「Miss」というように「既婚か未婚か」さえも一目瞭然だった時代があったのがいまでは不思議に感じてきます。
(文:耕雲)
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